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デジタルモンスター、特にデジモンフロンティアについて、一ファンの視点から様々な記事を展開しています。

デジモンフロンティア ドラマCD『希望という名の電車』感想

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デジモンアドベンチャーVテイマー01 Disc-7 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

やっとみんな会えたね

発売から2年以上経ちましたが、『デジモンフロンティア Blu-ray BOX』の初回生産特典新作ドラマCD「希望という名の電車」の感想記事となります。長らくお待たせして申し訳ありません。発売から何年も経過しているのでネタバレは配慮しません。事前に視聴しておいたほうがわかりやすいですよ。

 

 

 

 

舞台は現実世界、東京メトロ南北の車両。菊池正美(一体何ーモンなんだ…)のナレーションもそこそこに、高校生になった主人公たちが電車内で将来について語る光景からスタートします。心の準備をさせてくれ!*1

拓也は高校三年生、友樹は高校一年。友樹は身長180㎝まで成長し、かつての兄貴分をタッパで追い越しています。元々レギュラー陣の間でも身長低めでしたが…

高校生拓也の演技がどっかの火影みたくなってるってばよ。

 

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 おっきくなったね、友樹…(消滅)

元々サッカー少年だった拓也は順当にサッカー選手を目指しており、なんとセリエA(アー)…ではなくD(デー)ですが、イタリアへサッカー留学を果たすまでに成長。泉にイタリア語を仕込まれつつフィジカルとメンタルを鍛えている(本人談)ようです。その志は大変結構ですが、嬉々として「トミタスケヒロ選手を尊敬してんだよ!」と語るのはなんかの聞き間違いだと思いたい。

一方の友樹は拓也を「拓也さん」呼ばわりと、「お兄ちゃん」から卒業しています。鉄平や勝春との交流も続いており、良好な関係とのこと。どうやら高校一年でありながら「生徒会長」の座を狙っているそうです。キャッチコピーは「いじめ・いじわる赦さない」!普通に考えればチャックモンが背中を押してくれたトートイシーンなのですが、その語彙だと高校どころか小学校でも厳しいのでは…と心配になります。

拓也がまだサッカー続けてるのも意外…というかどうにも感慨が薄いです。だって彼、本編で全然サッカーしてないじゃん…

様々な媒体で「サッカー大好き!」とアピールされていますが、作中のほとんどをDWで過ごしたので、サッカーに絡めた人物描写がまあ少ない。本編だと10話とかで本人の口からちょろっと出たぐらいだし、49話の「現実世界に帰ったら俺…家族と仲良くするんだ…」的なモノローグでは父親とキャッチボールしてますからね。

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サッカーやろうぜ!

現実世界に即した設定をつくるなら、いっそ現実世界編でもやってフォローすべきだったと思います。少なくとも拓也が実際にサッカーしてるシーンはほしかった。純平の金持ち設定も連帯責任だぞ!あちらはチョコで買収したり、過去回想とかで片鱗が見えますがね。

ついでに「ロイヤルナイツやルーチェモンに嫌になるぐらい負け続けてた!でもあきらめなかったよな!」という爆弾発言まで飛び出します。公式でそれ言っちゃう??キャラソンで炸裂した神原の自己分析スキルがここでも光りますね。

「こいつら大丈夫かな…」といった一抹の不安を残しつつ、擬似兄弟パートが終了。

 

 

舞台は変わり、今度は都営大江戸

ここでは大学一年生になった純平と、読モJKのが談笑中。

純平は車内で約30秒(計りました)もオペラを熱唱し、モブに「何あの太った人~」と面白がられ、泉にも「アンタ何してんの!」と怒られています。聴いてる自分も軽く引きました作品内外で言われたダイエットに手を付けるどころか、落ち着きのない性格まで変わりません。

意外にも純平は音大に進学。泉ちゃんは「トリノオリンピック荒川静香選手を見てオペラ歌手を目指した」と感心しますが「泉ちゃんと親密な関係になりたかったから」と即座に否定されます。前者のほうがまだ真面目でよかったけど、純平だししょうがないですね。*2

 

意を決して「泉ちゃんの大学進学が決まったら、一緒にイタリア旅行とかどうだろう」とアプローチした純平ですが、「じゃあみんなを誘って拓也のサッカー応援をしに行こう!」とウッキウキでフラグをへし折られてしまいます。魔性の女すぎない?過失でやったことにしてほしい。故意なら悪意がありすぎる。もう純平は別の女を探したほうがいいのでは… 

本篇と遜色ないディスコミュニケーションっぷりですが、存外真面目な話もしており、話の折でフェアリモンになった時の変化にも触れています。風のスピリットの影響か、風に関する処理能力が向上したようです。前振りなしで「風に色が見えるの」とか言われるとヤバいブツでも決めたのかと不安になりますが…「俺はそんな余裕なかったし雷の何たるかも分かんなかったよ」とにべもなく突っ返す純平も純平です。常にテンパってるところが純平らしいというか、初期デジモンアニメのパイセン枠らしいというか。このドラマCDでも純平は終始残念なままで、逆に安心してしまいました。

デジモンに進化することって違う自分になるわけで、当たり前ですが見えてる世界も変わるんですよね。そういう「デジモンになった自分」への深掘り、フロンティアではあまり具体的に描写されなかったけど、変身ヒーローとしての解像度がぐんと上がるので、もっと聞きたかったですね。

 

 

青山一丁目駅で乗り換えた後、今度は輝二輝一が登場。「伝えたいこと」にて14分弱もの濃厚な双子粒子をばら撒いた二人の再演に胸も躍るね。

輝二はバックパッカーとして世界のあちこちを放浪予定、輝一はバイトと医学部受験の掛け持ちと、どちらも目標がぶっとび世界一周です。

双子特有の好感度MAXな会話が展開されると思いきや、お互い内向的な部分があるからか、ふとした拍子に「俺は輝二の替え玉も上手くできないんだな…」と凹み、二人で脳内反省し出します。コミュ障の会話か?

輝二は急に歌い始めたり、ポエムを出力したりと、作中より大分スカした明るくなった印象。この親しみやすさなら「薔薇の明星へ行こうぜ!」ぐらい言ってくれそう。小5の時点でゴツい犬を飼っていましたが、愛犬の名前が「ガルム」だと判明。あのドーベルマンと同じ存在でしょうか。7年経過してるし、寿命的に際どい所。偶然であれば北欧神話から借用する源家のセンスがマブいし、意図的なら輝二も存外思い入れがあったということですね。輝一は新聞配達のバイトをしつつ医学校を目指すそうで、本気で体調が心配。まあ一度死にかけてるし、多少の無茶なら大丈夫でしょう。歓迎会で例の阿修羅ポーズしたら大うけですよ!

 

輝一が勝手に凹んでる裏で、突如ヴォルフモン・レーベモンが参戦。なんと双子の後ろにスタンドの如くくっついている!(なんで!?)双子の後方パートナー面しながら「俺の輝二は頑張ってるもんな…」「いやいや輝一さんこそ…」と謙遜しあってます。どうやら輝二達をミラーモンスターみたいな形でちょくちょく見守っていた様です。レーベモンが「ダスクモンが強かったのは無知だったから」と彼なりに分析していますが、無知なだけであそこまで強かったのなら5闘士の面目が立たないと思います

そうこうしてるうちに電車は渋谷駅へと到着。渋谷ということは…?ここでナレーションの長台詞が入るのですか…

 

ナレーション「なにボーッとしてるの?君も降りるよ!デジモンについて行くんだ。あのエレベーターに乗るよ。行き先は地下のターミナル。君はそこからデジタルワールドへ行くんだ!デジモン達のフロンティアさ。君もデジモンが見えたでしょ?私はね、君みたいな人をDWに案内する役目なんだ。ああ、自己紹介がまだだったね。私は、ネーモン(超いい声)。よろしくね。」

 

 

 

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怒涛の情報開示に頭が混乱しますが、この珍走列車は乗客のことなどお構いなしに、更なるケイオスフィールドへと突き進みます。

 

 

今度は「アドベンチャー」からゴツモンパンプモンが参戦(!)。シリーズ違うだろお〜!とレーベモンに突っ込まれますが、「渋谷といえば俺たちじゃん!」とGet the Biggest FIRE!!ばりの楽屋ネタで強引に押し切られます。仮にも渋谷が舞台なのに、無関係の他作品にご当地ネタを奪われて恥ずかしく無いのか?本篇での描写がね…

双子のスタンドに続いて

チャックモンは激寒おやじギャグを連発し

フェアリモン女性専用車両がないことにプリプリ怒りながら

ブリッツモンはいつもの調子で

揃いも揃ってボケかましつつ登場。最初は真面目だったヴォルフモンも、イケメンヴォイスで「下ネタ言っていいかなぁ?*3とうめき始めます。光のお兄さん許して~セントアメジスト(聖紫水晶壊れちゃ~う↑

16年ぶりの出番だからか皆様妙にハイテンションですが、特にいびつなのがアグニモン。出るや否や、なぜか安土桃山時代の女芸人、出雲阿国のモノマネを披露。アイツ傾いてやがる…!

 

 

その後もゴツパンの流れ弾にキレたレーベモンがイヤミやリュウタロスのモノマネをしながらダスクモンに退化(!?)して暴れたり、収拾不可能な空気のままネーモンのそれっぽいナレーションとともに「FIRE!!」が流れて終了。

ヴォルフモン「なぁなぁ…こんな場合だけど…下ネタやっちゃダメかな!!?

4「ダメ~~~!!!」

 

ネーモン「ごらん、あれがデジタルワールドだよ。君のゆくべき未来、夢と希望の…フロンティア!!」

〜完〜

 

 

 

以上。ここから感想に移りますが、先に良かった点と疑問点を分けて解説します。

 

良かった点

高校生になった拓也達が順風満帆な日常生活を送っていること。ルーチェモン討伐後もDWがそこそこ平和なことです。

拓也達は、かつての冒険で得た経験をもとに逞しく成長していました。最終回のエピローグがすごい駆け足だったのが不満で、その後の生活について、一部分とはいえ好意的に提示されたのがよかったです。また、かつてデジモンに進化した拓也達が、その力に固執せず邁進しており安心しました。月日が経った続編にありそうな、過去の栄光に縋る拓也達は見たくなかったので…本人も言う通り「負け続けた」ことで、逆に全能感が上手くセーブされてたんでしょうね。

実在する登場した路線が登場することで旅情感が出て、聴きながらフロンティアらしい「旅のワクワク感」を味わうことが出来ました。現実世界での聖地巡礼ポイントがアップデートされたのもグッド。作中の乗車ルートにもきちんとした意味があるんでしょうが、鉄分が足りないので今一つぴんと来ていません。力不足ですね。双子が二子玉川に向かってたのはまあダジャレでしょう。

 

疑問点

懸念してた尻切れ蜻蛉で終わらないのはいいですが、説明不足というか、数々の新事実にどうしても混乱します。

まずこのドラマCDで一番不可解な成長を遂げたネーモンについて。アイツ、原作と喋り方も知性も全然違うじゃん!もっと気が抜けた口調だったじゃん!デジモンが見える人間って何!?何の目的でデジタルワールドに人間を招待してるの!?ボコモンやパタモンはどこ行ったんだよ!!!デジタルワールド救世紀(仮)の印税は!?

ネーモンは何らかの意思で「デジモンが見える人間」を「DWに誘致」していますが、経緯も意図も本篇では語られず終いだったので、これが本当に怖かった。受け手で行間を補完しろってことなんでしょうが、まず分からないことが怖いんですよ。最終話で「デジモンは人間界へ行けないんだよ~」と言ってたのはネーモン、あんたですよ。7年の間になにがあったんですか。従来解説役を担っていたはずのボコモンですが、今回は担当声優の杉山佳寿子さんが呼ばれませんでした。普段からやかましい癖に戦闘面はからきしなボコモンですが、ボケボケな4作目勢には必要な人材だったといなくなってから痛感します。ツッコミ役を抜きにしても、「拓也はんたちの活躍を本に残すぞい」と最終話で豪語しましたし、尚更フォローが必要だったのではないでしょうか。

最終話でスピリットから(分離)したデジモン達ですが、どっかの絆よろしくパートナーが消滅してないのは良心を感じたし、何だかんだ今でも深い繋がりがあるのは嬉しいです。ただちょっと、プライベートまで見てんのか…という息苦しさが…汚言症予備軍のヴォルフモンとかに日常生活を見守られたくなくないですか?

終盤5分のメタネタ満載ギャグパートなんて、語るに忍びありません。5分程度だから全然いいんですが…16年ぶりの続編でこんなのを30分も聞かされたら、こちらの精神が持たなかった。いくらフロンティアが現実世界の描写がシリーズ最小とはいえ、アドベンチャーからネタを引っ張ってくるのも…個人的にはどうかと思います。特にパンプモン役の七緒はるひさんは、フロンティアでも「ラーナモン」を演じていたはずです。アイドルキャラが渋谷にぴったりな分、参戦すればより画面が華やかになったと思います。まずはフロンティアのキャラを大切にしてほしいんですよ。楽屋ネタが悪いとは言いませんが、これはフロンティアのドラマCDなんですから。

あとこれは個人的かつセンシティブな話ですが、拓也達がもう2度とデジモンに進化して戦うことはないのだと改めて突きつけられ、哀しくなりました。最終話で拓也達に託された通り、アグニモン達は拓也が去った後もDWを支えている*4。それはとても素晴らしいことです。オファニモンみたいな手を使わずにDWの自浄作用が働いてる現状がいいのは間違いありません。ただ、DWの未来に安堵する自分とロマンを求める自分、違う僕が喧嘩してるんですね。我儘なのは重々承知してますが、拓也達にはやっぱりデジモンに進化して戦って欲しいんですよ。拓也が進化して闘うからこその『デジモンフロンティア』であって、これは他シリーズにないセールスポイントだと思っています。幾ら拓也達とスピリットがパートナーのような疑似関係を築いていたからといって、そこまで奪われたくはありません。ただ、じゃあ拓也を誰と戦わせるのと聞かれれば、言葉に詰まるのでしんどい。デジモンフロンティア、そういうところドライですよね…。

 

 

総括

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聴いててすごく疲れました。これはいい意味でも悪い意味でもです。とにかくツッコミどころが多いんですが、聞いてる私の心が悪に穢れているだけなのか?と何度も不安になりました。自分が信じられなくなったので、他の感想をくまなく検索しました。ですがこのドラマCDは本当に感想が少なく、他者の意見を参考にしたり、自分のスタンスを模索するのも大変でした。ただの言い訳に過ぎませんが、この記事が難産だったのもこれらの事情が関係しています。ここまで長々と書き連ねましたが、視聴後に少しでも共感する部分があれば幸いです。勿論異論反論もお待ちしております。

 

このCDを咀嚼するにあたり大いに参考になったのが、実は声優インタビューです。とにかく「それは言い過ぎちゃうん?」とたじろぐ程にズバズバ切り込んできます。

一例として、ブックレットに掲載されている、「ドラマCDの聞きどころや注目ポイントについて」の竹内順子氏のインタビューを載せておきます。

私は、輝一と輝二のラブラブなところが聞きどころだと思いますよ。他の二人は気持ちが通じ合っているのに、この兄弟だけは最終的に心の声で喋って、全然通じ合っていなくて反省し合っているところが面白いです。

拓也役なんだから拓也のことについて喋りましょうよ…拓也だって女形アグニモンとか迷シーンあったじゃん笑。迫真の演技ですので是非本篇を聴いてみてくださいね。

他の5人が穏当な分、竹内氏の差しっぷりが光ります。アニメディアの時といい、アニメイトインタビューの時といい、無理に美化せず思い切ったことを言いますよね。個人的にはそこが信頼できます。

メイン声優陣の座談会でも、今回のドラマCDについてキャスト陣の困惑がそのままぶつけられており、電車でオペラ熱唱とかの迷惑行為にもちゃんと突っ込まれてて安心しました。「デジタルワールドに行ったから価値観が崩壊している」「いろいろ崩壊した宝箱」とか、かなり好き放題言われています。

ただ、キャスト陣からもなんだかんだで(手がかかる子ほど…的な感じで)今も愛されてるのが分かり、優しい気持ちになれました。他にも現在まで語り継がれるスピリットエボリューション肉離れ事件の真相も明かされたりと、16年目にして新たな発見に満ち溢れているので、ぜひ手に取ってご堪能ください。

 

 

ドラマCDには興味があるけど高くて買えない、この記事で履修した気になってる人へ(そんな人いないでしょうが…)デジモンフロンティアBlu-ray BOXはAmazon他各種通販サイトにて好評発売中です。

「これ目当てで買う価値がある?」と聞かれれば渋い顔にならざるを得ませんが、この記事でまとめきれなかったカオスが満載なので、驚きは保証します。発売から2年以上経過した2021年現在でも初回生産版が3割引で買えます!ドラマCD目当ての購入でも安心ですね!

 

 

併せて富田祐弘氏の「歌舞鬼姫」も読むとより作中の小ネタを楽しめます。真っ当に面白い大衆娯楽時代小説です。以前当ブログでちょろっと触れたので、そちらもご参照ください*5

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:このドラマCD、発売当日までキャスト・スタッフ以外の情報が何一つとして発表されませんでした

*2:余談ですが、一昔前に「デジモンフロンティアの時間設定は2020年である」という説が一部界隈で囁かれていたのはご存じでしょうか。以前wikipediaに「作中部隊は西暦2020年」と書かれていたようで(現在は修正されています)、そこから広まったと思われます。当然ですが、本篇でそのような設定は一言も出ていません。トリノオリンピックの話題が出たので書いておきます。

*3:声優ネタかな、声優ネタでしょうね。

*4:ドラマCDを聞く限りだと、拓也達を監視しつつバカ騒ぎしてるだけのような気もしますが…

*5:

まさきひろ氏がTwitterにてそれとなく仄かしていましたが、トンチキサッカー選手名といい、終身名誉シリーズ構成こと富田祐弘大先生へのリスペクトなのでしょうか。